新型コロナ肺炎に見るファシズム(5)
渋谷 一三
437号(2020年4月)所収
(新型コロナ肺炎に見るファシズム(4)より続く)
<はじめに>
新型コロナ肺炎に見るファシズム(1)で
『国際化が進展してしまっている現在、ウイルスにとって、国境は完全に廃止されてしまっている。しかし、今回は従来になく国境を復活させようとする『移動制限』の嵐が吹きすさんでいる。これはどうしたことだろう?』
と、問題意識を述べた。
この点で4月9日に報道されたタイのバンコックの市長の言葉が秀逸である。
コロナ肺炎との戦いは長丁場になるマラソンのような戦いだ。コンスタントに持続可能な闘いをする必要がある、というものだ。
大阪府知事の吉村の『ダラダラとやっていてはダメだ。今、一気にやる』発言の対極とでも言える。
バンコック市長は、持続可能な闘いを念頭に、娯楽施設全てを営業停止にし、そのほかの制限は何も加えなかった。その結果、感染者数は減少に転じている。
他方、フランスやイタリアは都市封鎖に早くに踏み切った。また、何の対策もしないでいたトランプ政権下の米国は、世界1の感染者数を記録するようになるや、慌てふためいて都市封鎖に踏み切った。
独裁国家の中国、新型ファシスト政権のイタリア・フランス・日本・米国において移動制限と学校の閉鎖が取られていることがはっきりしてきた。
移動制限の嵐とファシスト政権・独裁政権との相関、その根拠を探っていきたい。
この相関関係を考えていく上で大いに参考になるのがドイツの取り組み方である。
これは、
@死亡率が低い(フランスの3分の1以下)
A5月4日からの休校の解除
B4月14日時点で、徐々に通常に戻るプロセスの検討を開始
と、とりわけ経済・社会生活の回復が早かった点にある。
9.ドイツの取り組み&韓国の早期回復&台湾の新規感染者0達成
ドイツの特徴は、医療態勢の全国的規模での早期確立とPCR検査の可能な限りの実施にあった。この結果、
1. 死亡率が低い。
2. 休校・移動制限の早期脱却。
3. 産業活動・社会生活の早期通常化。
などの成果を上げている。
4月14日時点で、ドイツは15000床の病床の余裕があり、社会の通常化プロセスの検討に入っている。同じ、4月14日時点でフランスは5月11日まで、さらに1カ月の移動制限の延長を発表している。
両国の相違は、医療態勢を州の壁を越えて全国規模で立ち上げることが出来たか否かにあり、日本における風営法対象業種への休業措置が出来たか否かにあった。
他方、韓国は前にも触れたように、ドライブスルー検査の実施など創意工夫にあふれる方法で可能な限り多くの検査を実施したことで、選挙を行うことも出来、一旦の収束過程に入っている。
これと同様の日本での成功事例が和歌山県である。知事は当初より国の基準を無視し、疫学的見地から必要な全ての人に対してPCR検査を実施することを許可した。この知事の気骨ある態度によって、和歌山県でのクラスターは完全に克服された。
(PCR検査実施率は、東京1.5%、大阪3.5%、和歌山35% である。)
また、台湾ではAI技術を活用し、マスクの在庫店舗のスマホ上への公開と購入数管理によって、新規感染者を0にしたとの報道があった。この0は、おそらく一時的であろう。また、新規感染者を翌日に回して新規感染者0デイを達成した事にするといった操作をするという可能性もある。だが、そうであったにせよ、全国レベルで新規感染者0を達成できたことは大きな成果である。
日本ではマスクの不足という事態に直面して、政府は『感染した人がマスクをするのは効果があるが、感染していない人がマスクをするのは効果がない。』などというデマを大々的に流して、マスク生産管理に国費を投入すらしない失態を隠しさえした。そうしておいて、全ての内閣閣僚と次官級官僚がマスクを着用し続けている。まさに大本営発表である。
台湾の取り組みの成功は、安倍政権のデマ体質を暴露することになった。
ついでに、立憲民主党の副代表の蓮舫議員は、台湾の取り組みを挙げながら、ITに全く無知な安倍君のお友達内閣大臣を追及すべくIT大臣をなじったが、為にする批判でしかなく、自分が政権を取っていたにしたところで、マスク購入管理は日本においては無理で、国民総背番号制の本格実施に道を開く以外にないことを知ってか知らずか、このことを全く顧慮せずに、ITに無知なIT大臣をいたぶって蔑んであそんでいるだけだった。
このような人物が、結党時に貢献していないにも拘わらず、女性票をあてにしてか、副代表になってしまうようでは、どうしようもなく腐敗している安倍政権を倒すことすら出来ない。全くお寒い国情である。
ドイツ・韓国・台湾などの取り組みに比べて、安倍政権は、先にも指摘したように、五輪開催(延期)にこだわって検査の実施を極端に少なくし、感染者数を少なく発表できるようにした。このために、感染は大いにひろがり、政府系の専門者会議の関係者でさえ現在発表されている感染者の10倍以上の感染者がいると推定出来ると語る事態に至っている。
自らの献金基盤の土建業者の利益を優先させて五輪にこだわり、経済全体の壊滅的打撃を招いた安倍君の識見の狭さ・失政は弾劾されてしかるべきである。
このように見てくると、新型ファシスト政権は、都市封鎖などの移動制限と学校の休校に走り、広い意味での医療態勢の構築に取り組んだドイツ・韓国・台湾・バンコック・和歌山県などの施策を軽視してきたと言える。
制限に走ったファシスト政権 と 医療態勢の構築に尽力した非ファシスト政権という対比が可能だ。
10.インフルエンザとの比較
当初、「安倍政権御用達専門家」連中から大々的に発表されたのが、『インフルエンザの死亡率の方が高い。』というものだった。
これが真実であるならば、休校措置も必要ないし、移動制限も必要でない。
だが、多くの国が休校措置をとり、何らかの移動制限を加えている。インフルエンザより感染力が強く、インフルエンザより死亡率が高いと見做しているからこうした措置をとるのではないか。
だから『インフルエンザより死亡率が高いのか否か』は、重大な問題である。
これによって、対応策は180度も違ってくる。
米国ジョンズ・ホプキンス大学の推計では、全世界で感染者数は200万人、死者は13万人と発表されている。
確かな数字は死者の13万人という推計で、感染者数の推測は明らかに実際より少ない。日本だけでも10万人は越えているのだから。
だが、この数字で計算してみると、新型コロナ肺炎の死亡率は6.8%ということになり、最近の日本のインフルエンザ死亡率0.2%よりはるかに高いことになる。ならば、移動制限も休校措置も妥当だということになる。だが、感染者数が世界で2000万人いるとすれば、0.68%ということになり、医療崩壊さえ防げれば感染して抗体を作った人々が「緩衝帯」となり収束に向かうことになる。移動制限も休校も、やりすぎの空騒ぎで、経済をダメにした大失政ということになる。
医療崩壊を防いだドイツの例や、徹底的に感染者を洗い出し医療措置を取った韓国の例をみると、どうやら、インフルエンザと新型コロナの死亡率や感染力に大差がないのかもしれないという推測が成り立つ。
そこで、日本のインフルエンザ死亡率で考察してみると、2018年のインフルエンザ死者数は3325人と推定される。一月あたり277人という計算になる。これは4月22日現在の日本での新型コロナ肺炎の死者数294人よりやや多い計算になる。
日本のインフルエンザ死者数は、インフルエンザの流行により通常の死者よりも多かった分をインフルエンザ死者数とみなす推定値にすぎないため、通常の死者数のなかに一定程度のインフルエンザ死者数が常に含まれている可能性が高く、実際は、この推定値より多くの死者がいると考えるのが妥当である。だから、新型コロナ肺炎の死亡率(日本では2%)は、インフルエンザの死亡率より高いとは言えない、という結論に辿り着く。
だが、今の死者294人という数字は、懸命の治療体制によって少なくなっている可能性もある。また、コロナ肺炎死者であるにもかかわらず、2月や3月の時点での死者は先に述べた日本のインフルエンザ死者算定方式により、既にインフルエンザ死者として統計処理されてしまっている可能性もある。
比較的正確な統計的考察は、もっと後になってしか出来ない。
だが、現在の米国での統計をみると、『新型コロナ肺炎の死亡率はインフルエンザに比べて特別に高いとは言えない。』と言うことが出来る。
ニューヨークでの3000人を対象にした抗体検査では、実に、13.9%の人がコロナ肺炎の抗体を既に持っていることが判明した。
この比率を単純にニューヨークの人口に比例させて当てはめてみると、現在公表している感染者数27万人のちょうど10倍にあたる270万人がコロナ肺炎に感染していることになる。
公表されている感染者数の10倍以上の人が既に感染し終わっていることになる。
ここでも、「医療崩壊さえ防げれば、感染して抗体を作った人々が「緩衝帯」となり収束に向かうことになる。」と言うことができそうだ。
このように見てくると、感染者数を減らし、命を落とす人を出来る限り減らすために必要な装置は、@風営法対象業種の休業 A同じく、集団感染が発生しやすい、学校の休校 B医療崩壊を防ぐために都道府県の枠組みを越えた医療態勢の構築 という点に絞ることができる。
こうしておけば、今のような極度の経済の落ち込みを避けることができた。
景気対策費用もはるかに少なくて済んだであろう。
前回のサージウイルス対策で全く何も学んでいない自民党政権である。
また、以前にも述べたが、感染者数が突出している地域をみると、中国人観光客が行く地域であることがはっきりした。北海道・東京神奈川千葉埼玉・愛知岐阜・大阪京都兵庫・福岡その周辺、である。
春節のインバウンドという目先の利益を優先させた安倍政権の失政である。
11.税の無駄遣い Go to 政策
旅行やコンサートなど今回の移動制限で大打撃を受けた業種を救済するために、移動制限解除後のしかるべき時期に、その費用の半額を補助するというのがGo to 政策である。
その費用は医療対策費用(検査・人工呼吸器・無用なマスク配布など)の約6000億円に対し、その3倍にもなる約1兆8000億が予定されている。
厚生労働省に対する経済産業省の優位を確認するだけの全く馬鹿げた予算である。
こんなものにかける費用があったら、マスクの国産化、人工呼吸器の増産と配備、CPR検査態勢構築にかかる費用の全面支出、検査費用補助などに使うべきである。
旅館業の一部、インバウンド需要に特化したホテル・民泊などは経済原理にしたがって倒産して調整するのが資本主義の流儀であり、それ以外の政府の空騒ぎによる被害者は分別するのが困難とはいえ今補償すべきである。
Go to 政策は、早くて1年後ぐらいにしか開始できない。その上、インバウンド需要を当てこんでひと儲けを企んだ人々にも救済の手を差し伸べることになり、供給超過状態を調整しないために、広く薄く補助するだけの「みんなで倒産」政策でしかない。全額を全く無駄にする愚の骨頂政策である。
1年後の無駄遣いを今計上するのは、コロナ対策費用を巨額に見せるためのファシスト特有のスタンドプレーである。
2020年4月26日
(新型コロナ肺炎に見るファシズム(6)へ続く)