ロシアのウクライナ侵略において、左派は被侵略民衆と政府の抗戦を徹底支援すべきである
As to Putin Russia's invasion of Ukraine, the leftists should thoroughly support the resistance of the invaded Ukrainian people and their government.
※掲載にあたって(編集委員会)
HANYU Michiru
埴生 満
461号(2023年2月)所収
〈要旨〉
今般のプーチン=ロシアのウクライナ侵略と労働者・民衆虐殺は人権、民主主義および階級闘争の観点から一切許せる余地はなく、怒りとともにこれを弾劾する。我々共産主義者はプーチン=ロシアの侵略と虐殺に反対し、米国・NATO諸国を含む世界各国の民衆と政府にウクライナ民衆・政府への全力での支援を求め、また自身でも実践する必要があり、それに向けた行動を呼びかける。この際、西側帝国主義国政府の過去の愚行・蛮行を理由にしてそのウクライナ支援を阻害しようとすべきではない。
プーチン=ロシアのウクライナ侵略と民衆虐殺を弾劾する
2022年2月24日、プーチン=ロシアはウクライナへの全面侵略を開始した。その後の経過においてウクライナ民衆への無差別砲爆撃・強制失踪・強姦・虐殺などが多発している。ロシア国内での各種弾圧とチェチェン・シリア・ウクライナなどへの侵略・残虐行為は、当該地域と全世界の労働者および一般民衆へ真っ向から敵対するものであり、共産主義者として1ミリも許すことはできない。満腔の怒りをこめてこれを弾劾する。
ウクライナ侵略においてもプーチンは「米国・NATOがウクライナを取り込んでロシアを侵略しようとしている」「ウクライナが(同国東部の)ドネツク・ルガンスクの人々を虐殺している」などの言辞を弄して1)己の侵略行為を正当化しようとしているが、いずれも根拠はなく実態とも異なっている2)。
プーチン=ロシアの国内での民主主義圧殺、あるいはチェチェン、シリアにおけるこれまでの民衆虐殺行為を見ていれば、ウクライナはじめ各国の民衆が西側自由主義圏ないしNATOへの接近を希求するのは全く無理からぬことである。近東での「アラブの春」、ウクライナの「尊厳の革命」(マイダン革命)において労働者含む民衆が抑圧を忌避し、より自由で民主主義的な空間を求めたことは当然支持・支援されるべきであり、それは労働者階級の闘争の条件拡大にも適うことである。今はまだ存在しないとしても将来、労働者の全世界的な革命運動組織が建設された暁には、その組織がプーチンなど権威主義的独裁者による労働者を含む一般民衆への弾圧を許さず、民衆解放と独裁者排除のために相応のあらゆる手段を用いるだろう。従って、そのような組織のない現在においても、組織のないことの限界はあろうが、我々はそのような方向で思考し行動すべきである。ウクライナへのロシアの侵略においても、我々は民衆の勝利、独裁者とその軍隊の敗北・撤退、さらには独裁者の失脚を目指す。これはウクライナだけでなくロシアの労働者と民衆に対しても、その人権を回復させ民主主義的な空間をもたらしうるものである。
ウクライナ支援に国際的な諸力を結集させるべきである
我々共産主義者は現時点の現実から出発する。そして我々が事態をコントロールする完全な能力を直ちに持ち合わせない以上、現存する諸勢力がこの方向でウクライナ支援に参加することを許容し促進する。すなわち米国やNATO諸国をも含め全ての国の民衆と政府に、ウクライナ民衆およびそれを代表する民主主義的政府への軍事面を含めたあらゆる支援を求める。帝国主義国たる西側先進国はもちろん、たとえポーランド・ハンガリー・トルコ・日本など自由主義圏に寄生する権威主義的政権であっても、ウクライナ民衆の解放に資する行動をとるならばそれを是認する。即ち、黒い猫でも白い猫でもネズミをとるならば、この際ひとまずはいずれも良い猫と考える。無論このことは、他の場面において上記諸国・諸政権による不正義な行為を糾弾することをいささかも妨げるものではない。例えば我々は、@米国がイラク・フセイン政権を倒すために虚偽の大義名分を掲げたことを当然に非難するが、それを理由にA米国がウクライナに各種先進的兵器を提供することを否定することはしない。なぜなら@は労働者・民衆に対する欺瞞を企図した不正義なものだったが、Aは労働者・民衆を権威主義的かつ人種差別的な独裁者の抑圧と攻撃から解放するという正義に適っているからである。ウクライナが不正義なプーチン=ロシアの侵略を排除できるように米国抜きで支援しきる力量を我々自身がまだ持たない以上、我々が米国のウクライナ支援を妨げるならばそれはウクライナ民衆の解放を阻害するという不正義な事態を招くため、そのようなことを我々は差し控えるべきである。また独裁者の民衆虐殺軍と戦って勝利する経験は、ウクライナを含む全世界の労働者と民衆の自信(自己効力感)と能力を高め階級闘争を前進させることに寄与するものであるから、その経験の促進を目指して支援を行うことはマルクス・レーニン主義の観点からも妥当である。
現時点の世界は、ごく近い将来に明確な革命が生じる状況にないとみてよいだろう。しかしそのことは我々をいささかも消極的にさせるものではない。まだ問題と限界の多いこの世界ではあるが、労働者階級を含む民衆にとって真に有為な革命を準備するためにも、我々は労働者階級の経験・能力を拡大していくことをポジティブに営々と続けていく。その中で民主主義を拡大し人権水準を向上させていけばいくほど、すなわちこの世界の正義性を増大させておくほど、労働者階級と一般民衆が各種の抑圧と戦うための力は有形無形に増強され、「まともな革命」が近づくと期待できると考えられる。
共産主義者は世界の労働者・民衆とともに侵略者と闘うべきである
今回の戦争でも現に多くの労働者と民衆が、プーチン=ロシアの侵略を頓挫させるべく自発的な活動を展開している。ここには、街頭およびインターネット上でプーチン政権を非難する各種抗議活動、ウクライナ側を支援する各国義勇兵や募金活動、ロシア国内の抵抗運動や国際ハッカー集団「アノニマス」などが含まれる。これらは将来の国際的な労働者階級の運動を構想する上で着目すべき事象であり、我々自身もここに加わり、知見と経験を蓄積していくべきである。
上記の観点から全世界の共産主義者に対し、各自の活動条件に合わせて以下のような種々の行動に参加し、あるいは自らそのような行動を組織して、周囲の労働者・民衆に働きかけそれを拡大していくことを呼びかける。
- 自国政府に対し、ウクライナの労働者・民衆およびそれを代表する民主主義的政府への全面的(人道的か軍事的かを問わない)かつ最大限の支援を要求する。その一部として、ウクライナとロシアからの難民・亡命者を最大限受け入れることを求める。それと同時に、ウクライナの犠牲において、プーチン・ロシアに侵略からの利益およびさらなる侵略への動機づけを与えるような誤った融和政策(例・「ウクライナ・ロシア双方の即時停戦」「プーチンの面子を守る」)に反対する。
- ウクライナ現地での活動、自国社会での募金・街頭行動、インターネット上の活動などあらゆる手段で、ウクライナの労働者・民衆、あるいはそれを代表する政府への直接的支援を行い、現地と国際社会におけるその力と立場の強化を図る。
- ユニセフなど国連の人道機関、「国境なき医師団」などを含む国際NGOのウクライナや周辺諸国での活動を支援する。
- インターネット上かリアルの現場かを問わず、プーチン政権およびその出先諸機関や追随者によるディスインフォメーション(虚偽情報)を含めたプロパガンダ(例・「ロシア人とウクライナ人は一体」「ウクライナ政府はネオナチ政権」「特別軍事作戦はウクライナ人の解放が目的」)の欺瞞を徹底的に暴露し、それらを無効化していく。
- 左派内部を含め存在している「プーチンの侵略は悪いがNATO・ウクライナも悪い」といった、事実経過を無視した日和見主義的な「どっちもどっち」論を批判し克服していく。
- 自国において、ウクライナ・ロシアにルーツを持つ市民に対する人種差別的攻撃・人権侵害を非難し抑止する。
全世界的な労働者階級の革命を準備する一環として、プーチンの独裁政権をその侵略軍ともども打倒し、ウクライナ、ロシアそして全世界の労働者・民衆のための自由と民主主義的空間を拡大しよう。
参考文献
*1 NHK. 【演説全文】ウクライナ侵攻直前 プーチン大統領は何を語った? 2022/12/27確認.
*2 Game*Spark. 「フェイクニュースに踊らされず、勝手な想像に留めない」ジャーナリストが見た生のウクライナ情勢―藤原亮司氏インタビュー. 2022/12/27確認.