イスラエルの暴挙を弾劾する!
渋谷 一三
465号(2023年10月)所収
1.イスラエルは直ちに軍事侵攻を止め、空爆を止めよ!
2.イスラエルはオスロ合意に立ち戻り、これを順守せよ!
3.イスラエルはパレスチナへの入植地から即時撤退し、原状回復せよ!
10月6日、ハマスはオスロ合意30周年に合わせて、オスロ合意を無視してガザ地区への入植とパレスチナ人殺害を繰り返しているイスラエルへのロケット攻撃と「越境」攻撃を行った。
これは、ユダヤ人の入植地で日々繰り返されていたパレスチナ人迫害・殺戮への鬱積した報復である。
4.米国はイスラエル支持をやめ、国際法に基づく態度を取れ!
2000年前に祖先がこの地に住んでいたからここに建国するという無茶苦茶な「論理」で圧倒的武力を背景にイスラエルを「建国」するというシオニズムにお墨付きを与え、武器援助をして、イスラエルなる国家をパレスチナの地に作り、第1次中東戦争から第4次中東戦争に至るまで一貫してこれを援助してきたのは英米である。
これは第2次世界大戦後の戦勝国による「国際秩序」形成の一環として行われた。
1909年からからキブツという集団農場を少しずつ形成し、量的蓄積を進めてきた入植運動は一気に質的転換をし、1945年から、そこに住んでいたパレスチナ人の放逐とユダヤ人によるその土地所有とが進められた。
これは露骨な侵略であり、決して今マスコミが言っている「暴力の連鎖」などではない。この露骨な侵略を実現させたのは、米国の、圧倒的な軍事力による「イスラエル建国運動」だった。
キブツは社会主義の集団農場の理想を追求する体裁をとってカモフラージュをしていたが、その実際は「入植地」の武力による維持・防衛の必要性に基づく武力共同体だった。
現在米国には人口の2%に上るユダヤ人が住み、ロックフェラー財団に象徴される巨万の富を背景に米国経済に大きな影響力を持ち、一貫したロビー活動と巨額の政治献金によって米国政界の2大政党制のキャスティング・ボウトを握っている。
このため、ユダヤ票が入った方の政党が政権を取ることになる。共和党が民主党より強力にユダヤ票に依存しているが、民主党とてユダヤ票を完全に敵に回せば、政権はとれない。このため、バイデンはイスラエル寄りの行動と発言を繰り返している。
米国大統領の発言や行動は、この極めて狭い政治的利害によって決定づけられており、国際法に基づく態度決定ではない。
このため、米国のウクライナ支持と支援は色褪せて見え始めた。殺人鬼プーチンに塩を贈ることとなってしまった。イスラエルはプーチンの東部2州と同じ位置に立っている。
5.クラスター爆弾の使用とイスラエル支持とによって道徳的優位性を失った米国のウクライナ支持
西欧諸国のクラスター爆弾使用反対の声明にも拘わらず、ウクライナ政府と米国は、ロシアのクラスター爆弾使用に耐えかねて、遂にその使用に踏み切ってしまった。
その結果、クラスター爆弾の使用を違法とする国際法の動きに敵対することとなり、侵略戦争に反対する国際的潮流をになっている良心的・活動的な人民の支持を失いつつあり、これが“支援疲れ”とマスコミがミス・ネイミングしている事態を生み出している。
ハンガリーではウクライナ支持からの相対的離脱=自国の利益優先を標榜する右派政党が躍進を遂げた。
6.ハマスはガザ地区の政府・行政組織であり、「実効支配」をしているのではなく、正当なガザ政府である。
日本のマスコミや米国・イスラエルはハマスをテロ組織として宣伝し、ガザへの軍事侵攻・住民虐殺を正当化しようと煽動している。
パレスチナの選挙で、西岸地区のファタハ系候補がガザのハマス系候補に勝ったのは事実である。だが、ガザ地区での得票は圧倒的にハマス系候補が勝っていた。
その後イスラエルのオスロ合意無視・ガザ隔離政策によって、西岸地区とガザ地区との交通は遮断された。選挙はこの後一度も行われていない。
この結果、パレスチナの統一性は失われ、西岸地区での正統政府がファタハ系、ガザ地区での実際上の政府がハマスと成らざるを得なかった。
現在、行政機能を担っているのはハマスである。これを米国やイスラエルは隠し、テロ組織ハマスが実効支配しているだけだとキャンペーンを張り、「イスラム国」になぞらえて自らの軍事侵攻を正当化しようとしている。
米国はイスラエルではロシアの手法を使い、ウクライナではその手法を非難しているだけである。これでは、国際的共感を得られるはずもなく、米国のウクライナ支援は侵略戦争への反対ではなく、米国の利害のための工作に映っている。
実際、米国はブラジルが安保理に提案した決議案を、拒否権を使って葬ってしまった。
米国はイスラエル支持を止めるべきである。
イスラエル支持を止めない限り、米国の道義的一貫性はなくなり、米国が国際的協力を得ることはなく、政治的・軍事的影響力を得ることもない。