―円安が止まった―現実に対応する能力を持たない自公政権(2)
渋谷 一三
460号(2023年1月)所収
1.11月11日 突如円安が止まった。
9月21日から11月10日まで、1ドル144円以上で推移していたのが、11月11日、突如1ドル141円に下落した。これ以降12月20日まで1ドルは、137円から140円の範囲内で推移した。
2度のドル売り円買い介入が効果なく円安を止めることなど出来なかったのが、11月11日にガクンと下落した。何かあったに違いない。
推測は二通り。日銀が金融界のトップ層だけに「異次元の金融緩和」を止めることをこっそりとリークしたか、この情報が日銀から漏れ出たか、である。
12月21日の日銀の金融政策決定会合で、長期金利の幅を現行の上下0.25%から上下0.5%に緩和することが決定された。要するに金利を上昇させる伏線を張ったのである。上に0.25%までしか変動させなかったのが、0.5%まで上げると宣言しているようなものなのだ。
これで、円は一段と円高方向に進み一挙に1ドル132円になった。
11月11日の突然の下落は、今回の決定=「異次元の金融緩和政策」の終わりを示唆する情報があったことによる。実際有力な証券社員は、12月に入ると黒田政策の変更は有り得ると公然と発言するようになっていた。
実際、150円を付けた円安以降、金融関係有力社員は円安のデメリットを公言するようになり、彼らの圧力が今回の「黒田の敗北」のお膳立てをしたと言える。
2.黒田の面子(アベノミクス)のために、必要な経済政策がとれない自公政権。
今回の政策決定会合の会見の言い回しがくどい上に分かりにくくなっているのは、「異次元の緩和」なる政策が全く誤ったものであり、安倍政権の停滞の9年間をもたらした元凶であることを認めたくないために、「賃金上昇を伴わない物価上昇だから」だの「円安は景気を刺激する」などというウソを言っているからだ。
このような体たらくなため、黒田が退任する4月まで根本的な改革が出来ず、停滞の9年間を引きずるだけになっている。
3.株価の暴落は、トレイドで儲けるための常套手段。
黒田を退任させ、「アベノミクス」を清算するならば、日本の経済成長は再開する条件を得る。
株価は数日単位で乱高下する。この傾向は近年顕著になり、米ダウ株価は10年前までは数十ドル単位で上下していたのが、最近では数百ドル単位で乱高下するのが常態化している。
数日で実体経済が変わるわけはなく、実体経済とは関係なく、数ヵ月後の企業業績を推定する形で株式を売買するため、予想がテコの原理で増幅される。このため、常に実体経済より株価のぶれ幅の方が大きいのである。
かくして、日銀が金利の上昇上限を現行の倍にすると声明したという事実をもって、下落の口実が出来、『投資者の大半がマイナス材料だと判断する』と市場が判断すると、暴落が始まる。
このシステムは極めて簡単である。
市場心理が下落を予想しているのだから、今手持ちの株を先ず売ってしまう。
すると、下落が始まる。下落が始まったことが下落を加速させ、暴落する。この時点で買い戻すのである。すると、数日後か数週間後に元の株価水準に戻った時には、暴落した分が利益となって帰ってくるのである。
だから、株式市場参加者は、何かと理由を見つけては株価を吊り上げたり暴落させたりするのである。この変動幅が大きければ大きいほど市場参加者の利益が大きくなる。
このため、最近の株価の変動幅は大きくなり、ダウでは数百ドル単位、日経平均でも数百円単位で乱高下するようになっている。
この場合の“市場参加者”は投資家ではなく、株価操作で「不労所得」を得るだけの者としてしか立ち現れない。
株価の暴落が、『利上げに失望して売りに出た。』のではなく、『これを口実に“不労所得”を取りに行った。』だけのことであることを押さえておこう。
であるがゆえに、日本政府・日銀が利率を決定していく自由を再び手にすれば、日本経済の停滞は克服され得る。
4.経済を知らない岸田政権の迷走
軍事費をGDPの2%まで引き上げるという安倍の発言を「遺言」にしてしまった上に、即座に2%まで倍増しようとする愚。
これには、当の安倍派から増税反対の声が出るほど混乱している。
現行のGDPの1%という軍事費の上限を、2%まで引き上げるという構想を、即座に2%まで軍事費を増大させる拙速な政策を押し進めようとしている。
停滞の9年を引きずっている現在、経済成長はストップしている上に、円安による輸入原材料の高騰が物価を急上昇させている。
この折に増税などは愚の骨頂である。
さらに、増税の是非を問うために衆議院を解散すると明言してしまっている。
物価高と増税という二重に誤った政策の信を問うならば、自民党の惨敗は必須である。
国民はそれほど、愚かではない。野党がしっかりしてさえいれば、自公癒着政権は明日にでも崩壊する。創価学会以外の宗教法人は、自公癒着政権には潜在的に敵意を持っている。