共産主義者同盟(火花)

無方針・無策の岸田内閣

渋谷 一三
458号(2022年10月)所収


円安が止まらない。当然のことである。

 安倍の子飼い=黒田日銀総裁が、相も変わらず、「異次元の金融緩和」を継続することを宣言したため、3兆6000億円を投入したドル売り・円買い介入の効果は3営業日で効果を失った。
 145円が141円になって、3日で145円に戻ったのだから、3兆6000億円×145分の141=約3兆5000億円。たった三日間のために1000億円の損失を計上したことになる。
 1000億円をドブに捨てたのである。

 0金利を止めない限り円安は止まるはずがない。ドルが利上げをするたびに円安は階段状に進行する。ここに円売り介入などしても仕方がないのである。
 こんな簡単な経済学のイロハを、岸田は知らないから、世論対策として黒田に円買い介入を指示したのだろうか?「新しい資本主義」などという世界中のどの経済学者も理解できないことを言い出す程度だから、あながち外れでもないかもしれない。

 だが、日銀総裁ともあろう者が、こんな初歩の経済学を知らないはずがない。
 なのに、ドル売り・円買い介入をしたのは、岸田に「命令」された他に、事情があるはずである。

 それこそが、最も本質的な問題である。

 実は安倍政権の『停滞の9年』の間、ずっと、未曾有の金融緩和をし続けたために、この政策を止める事が出来ない構造が出来上がってしまっているのである。
 市中銀行が利益を得る方途がマイナス金利に依存しており、利子がつかない預金に貯蓄は集まらず、市中から金を集める機能はほぼ停止しているからだ。

 日銀は、0金利政策を、例えば1年以内に止めて行く方針を示して、市中銀行に準備を促して行かなければならないのに、黒田総裁は自らの任期が切れる来年3月以降も2年も3年も現在の『異次元の金融緩和』政策は続くなどと、正解と真逆のことをのたまっている。
 自分の任期切れ後のことを語る常識のなさと傲慢さはこの人物特有のものだが、安倍に任命していただいた9年間の、自らの誤った学説の誤りを認めるわけにはいかないという極めて個人的な矮小な面子のために、現在もなお、過ちを修正しない道を歩んでいる。

 巷で、『検討士』と揶揄されている『決断の出来ない男』は、黒田総裁の「任期後まで言及する」不規則発言に釘を刺すことすら思いつかない有り様で、無能ぶりを発揮している。
 自公政権を打倒しないかぎりは、終わりの見えない円安とそれに伴う物価上昇に庶民(下層階級なのだが、そういう自覚がない。)は苦しめられ続けることになる。

 結局安倍政権の『停滞の9年間』は、「異次元の金融緩和」によってもたらされたと同時に、0金利によって市中の金が株式市場に向かい株高をもたらし、そのため株を持っている上層階級の資産を増加させ、上層階級の圧倒的支持を獲得した政権だったと単純化できる。




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