共産主義者同盟(火花)

日本の民主主義を破壊した自公安倍政権

渋谷 一三
401号(2015年9月)所収


<はじめに>

国会前では、安保法案に反対する市民が連日深夜まで包囲・抗議活動を行っている。抗議活動は東京だけではなく、全国で行われているが、毎日新聞系列を除いては、報道されていない。その毎日新聞系列でも目立たない記事や視聴率の低い深夜時間帯のスポット・ニュースで軽く触れるだけです。
このような報道機関の弱体化は安倍政権で一貫して追求され、ほぼ完成しつつある。右翼からターゲットにされてきた朝日新聞系列は、元々左翼だったためしはないが、安倍政権を補完するような及び腰の報道姿勢が目立つようになり、新聞の購読者数の急速な減少を招いている。
 報道機関が国民の反対活動を報道しない理由の9割は政府からの締め付けにありますが、1割は反対者の活動などにもつけこまれる理由がある。参加者の人数です。
 警察発表は意図的に低く発表されます。これに対抗しようとするあまり、主催者発表は過大に発表されてきた。組合動員をかけたらその動員割合を機械的に合算して発表するという腐敗した「組合政治」を行ってきた『連合』などの古い勢力の古い「政治」がまだ横行しているからです。
 しかし、こうした二重の負の遺産の中から、こうした影響をあまり受けてこなかった若い人たちが立ちあがり始めました。ここに、日本の唯一の希望があります。
 また、保守・頑迷しかなかった老人階層が相対的に大きく減少し、「性懲りもなく闘う高齢者」という新しい人間像が生まれていることも、新しい日本史の現象です。安倍の祖父、釈放された戦犯岸信介が強行した60年安保が生み出した新しい人間像と言えなくもない。皮肉な歴史が繰り返されようとしています。

1.橋下徹の屁理屈にいちいち乗りかかる民度の低い大衆の登場

橋下徹は、『国会周辺でデモをしている人数は国民の何パーセントなんだ。文句があるなら次の衆議院選挙でひっくり返したらよい。』という趣旨の発言をしている。
実に使い古された屁理屈です。60年安保時に岸信介が「物言わぬ多くの大衆」と言い、80年ごろに中曽根首相(当時)が「silent majority」と言って抗議活動を無視し、その後の「政治不信」(実は深いところでの政治的変化・深化)を招いた歴史があります。
橋下徹は、この陳腐な屁理屈を口にすることで、安保法制に反対する人々を敵に回したのですが、それでも大阪の選挙で当選し参議院議員になれると思っているらしい。こうした様子を見ると、反対する人々が本当に少数派の「確信犯」だと思っている節があります。そうならば、あきれかえります。
自公に投票した人々は投票総数の33%程度に過ぎない。投票に行かなかった人の政党支持率は、投票に行った人の政党支持率に同じ分布をするわけではないのです。現政権支持率ははるかに低いのです。だから、仮に、投票に行かなかった人の間の政党支持率が行った人と同じと仮定したところで、全有権者の3割強でしかなく、自公維新などの支持率を合算したところで、多数派は自公ではないのです。
少数派である自公が、議会では圧倒的な多数の議席を持っているわけで、これは、代議制民主主義の危機を示しているに過ぎません。民主主義を機能させるためには、代議制民主主義の抱えるこうした危険を十分に認識し、選挙制度を変えることや住民投票を活用することなど、代議制の欠陥を補完する努力をしなければならないのです。
こうした努力に意識的でないばかりか、大衆の直接的行動を嘲笑う橋下徹のような政治家には、自らの言葉にきちんと責任を取らせて、政界から引退させましょう!

ファシスト達は最近大衆を政治動員するようになっています。今回の安保法案でも、「法案を可決して下さい」というデモを組織している。橋下徹君に言ってあげよう。デモの数でもあんた達は負けているということをどう釈明するのかと。

2. 米国も日本の戦争に巻き込まれるのは御免だと思っている。

米国と組んで、中国の脅威と戦おうというのが、安倍の浅薄な心づもりであるのは言うまでもありません。
しかし、スプラトリー諸島の実際に見られるように、中国が浅瀬を埋め立てて滑走路を3本も作り、スプラトリー諸島を実効支配し始めても、米国は口先で抗議するだけで阻止行動を取らないばかりか、妨害行動すら取らないのです。
当たり前です。滑走路建設の妨害行動をすれば、現在の中国ならばほぼ確実に軍事衝突に発展し、スプラトリー諸島周辺に限定した戦争が開始されるのです。スプラトリー諸島に権益を持たない米国としては、今や第1の貿易相手国となっている中国権益の方が大事なのは言うまでもありません。米国は中国と戦争する気はないのです。中国と戦争すれば、米国も確実にダメージを受けるからです。
ASEAN諸国における米国権益が大きなものにならない限り、米国がスプラトリー諸島を巡って軍事行動を起こすことは絶対にないのです。
明朝時代の中国の大航海時代の「発見」を根拠に、遥か南海のスプラトリー諸島の領有を主張するという滅茶苦茶な「南沙諸島」領有権問題にして、米国はこのような態度を現にとっているのです。
翻って尖閣列島問題をみると、日本が領有権を主張する根拠は薄弱なのです。台湾を併合してしまった時に尖閣列島の領有権を確認し、日本以外に領有権を主張する国がなかったからというのが、日本が領有権を主張する唯一の根拠です。裏を返せば、それ以前は日本も自国領土と思っていなかったと宣言しているのです。
その通り。尖閣諸島は日中どちらもものでもない単なる岩礁だったのです。
中国にもほぼ同等の領有権を主張できる根拠があるわけで、日・中・台共同管理水域とするのが妥当なのです。
明らかに中国に領有権を主張する根拠がないスプラトリー諸島に対してすら実力行使をすることがないのに、日本のものとも言えない尖閣列島の領有をめぐって、米国が中国と軍事衝突することは絶対にないのです。集団安保体制にして義務付けようなどという相対的弱小国の思惑など、思惑にすぎず、米国への枷になど絶対にならないのです。     
例えば日本がロシアのクリミア領有を承認し、見返りに4島の返還を実現させれば、米国が、尖閣を守るためにと称して中国に対して軍事的圧力を加えるという可能性の方がはるかに実現可能性の高い図式なのです。

集団安保体制を強化すれば日本の「安全」が向上すると言うのは、ことほど左様に、稚拙な思惑にすぎないのです。

3. 代議制議会制民主主義の破壊はファシズムを生んだし、生む。

自公連立安倍政権の大罪は、強力な民主主義とは程遠いがゆえに脆弱な代議制民主主義を破壊したことにある。
過去、日本が30年戦争に突入した時もそうでした。報道機関の統制支配体制が徐々に構築され、ついには大政翼賛会が作られて行きました。今、報道機関への統制が効き始め、言論人は後で集中攻撃に遭いマスコミからも干されてしまう恐怖から一言一句に極度に注意を払うようになり、滅多に首相を批判することは無くなりました。批判する場合でも、「怒られるかもしれませんが、」とか「言い分があったら言って下さい」などと前置きをしてから、こういった見方もあるというような引いたスタンスでおそるおそる発言するようになっている。歯切れの良い、言い過ぎもある弁舌はファシストだけに許されています。戦前の情況に酷似しています。
公明党の連立参加がなければ、自民党はとっくに死滅していたはずの政党でした。
まだまだ未成熟の日本の民主主義を破壊した一番の「元凶」は、公明党であったことを記銘しておきましょう!

4. 運動の新しい質

今回の安保法制廃案運動で、二つの特筆すべき質が開花しました。
 その第1は、仮に自公が強行採決しても集会活動やデモや抗議活動を行うと宣言してやり続けるであろう点です。
 従来の運動は、阻止に重点を置きすぎるために、強行採決された場合には強い敗北感に襲われ、狭い実力行動主義を生み出したり、政治不信をかこってニヒルに新たな現状の中に身を置いてしまうという人間像を生み出してきました。
 今回の運動の新しさは、政策阻止に運動の最終目標を置いていないために、従来の運動の狭さを克服しています。それゆえに、敗北感からする無力感や「実力」行動主義の発生を抑止できています。
 強行採決後でも運動を続けられるのは、集会活動をメインにしたことによる社会運動がその内容となりうるからです。この新しさを断乎支持しましょう!

 新しい質の第2は、集会活動による意見表明・意見交換が豊富に実現されることによって、直接民主主義の内容の萌芽が育まれていること。これと同質なのですが、この運動に触発されて、作家・音楽家のみならず、憲法学者、法曹関係者、自衛官などなど、様々の人々が各々の持ち場に即して社会的に発言し出したという新しい現象を生んでいることです。
 運動の新しい質を獲得した今回のうねりは、日本の歴史上、画期的なことであります。

新しい運動万歳!
自民党と公明党を消滅させよう!




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