共産主義者同盟(火花)

「二極化」を打破し、人々の革命欲求に応えるプロレタリア党を!

流 広志
289号(2005年9月)所収


小泉自民党の圧勝は、労働者階級大衆の闘いの本格化を意味する

 郵政民営化賛成か反対かを国民に問うとして行われた総選挙は、自民党の圧勝で終わった。これだけの大差がついたのは、小選挙区制度の特性が働いたためである。実際、自民党は小選挙区の闘いで接戦を制しているケースが多く、地方では前回と大して変わらないところが多い。NHKの出口調査によっても、政党支持率は前回の総選挙時とほとんど変わっておらず、内閣支持率も前回と同じであった。無党派層の自民党への投票率が、民主党を多少上回っただけである。総有効得票数約6806万票のうち、自民党の得票数は全国総計で約3251万票で、民主党は2480万票強、両党の差は約771万票である。得票率の差は約11%だが、獲得議席数では、自民党が小選挙区の7割以上を占めて219議席、それに対して、民主党は52議席にとどまり、約4倍の差がついた(12日『毎日新聞』)。「東京の都内25小選挙区の有効投票総数のうち自民党候補は約50%、民主党候補は約36%の得票だったが、獲得議席数は「23対1」だった」(同)。これは、「風」次第で、野党の大躍進があり得ることを意味している。この制度の劇的な効果を見て、小泉の広告役を務めたマスメディアでさえ、驚き、恐怖にとらわれた。おそらく、「風」にのって自民党に投票した無党派層を含む有権者の多くが似た感情にとらわれているだろう。経団連奥田会長も、ここまで勝つとは思わなかったと驚き、専横にならないようにとくぎをさしたほどだ。
 小泉自民党は、特定郵便局長会やOB組織や幾つかの県連や支部組織を切り捨てた。それでも、無党派層の「風」を起こせば、それ以上の票が得られると読んだ。それに対して民主党は、郵政民営化法案否決での解散はないと油断し、選挙への備えが遅れ、「風」を起こすことに失敗した。郵政民営化は最後まで最大の焦点にはならなかった。「賛成」に本気の自民党が躍進し、「反対」に本気の社共が健闘した(社民党は得票数20%増の約360万票、共産党は約492万票、合計で約850万票)。どっちつかずで無気力な公明、民主は議席を減らした。これは、政治的対立軸が、新自由主義か社会民主主義かに移りつつある兆候である。
 郵政民営化問題は、社会の公共事が何かという問題である。それを、小泉自民党は、「民でできるものは民へ」ともっぱら能力によってはかり、規定しているのである。このように能力主義を社会的公共事の基準にすれば、資本制社会の「民」の能力は資本の能力、すなわち利潤をもたらす能力を基本にしているのだから、利潤を生まないという資本としての能力のない郵便局は、消えることになる。しかし、ユニバーサルな郵便業務は社会の公共事であり、ニュージーランドの郵政民営化の失敗例からは、ユニバーサルな金融サービスは社会の公共事であるといえよう。アメリカで銀行口座を持てないということは貧困の印となっているが、最低限の健康で文化的生活を保障している日本国憲法の下ではそれは憲法に反する状態になる。
 大ブルジョアジーの方は、経済財政諮問会議などを通じて小泉政権が、自分たちの利害に従っていることに満足し、郵政民営化から最大限の利益を引き出そうという狙いがあるから、積極的に小泉自民党を応援した。特定郵便局長などは、小ブルジョジーで階級が違うプロレタリアートへ対抗するために組んだだけの仲間にすぎなかった。それに変わる浮動層が新たな味方に加わった。ただし、この新たな仲間は、いつ離れるかわからないのだが。とにかく、大ブルジョアジーと金融貴族の利害代表が議会の圧倒的多数を制したので、小ブルジョジーや労働者大衆を本格的に攻撃する態勢ができたことは確かである。巨大な反革命の政治権力が誕生したことで、税金と債務を通じた小ブルジョジーの収奪が強まることになるだろう。
 大ブルジョアジーと金融貴族に痛めつけられた小ブル層は、プロレタリアートの側に引き寄せられている。社民党と日本共産党は、「二極化」・増税・社会保障負担増反対を選挙で訴えた。その結果、消滅かと言われる逆風の中で、共産議席維持、社民2議席増(敵失のおかげもあったが)と善戦した。反対に与党として有利な立場にあったはずの公明党が3議席減らした。ケインズ主義をストレートに訴えた「新党大地」の鈴木や国民新党亀井も議席を得た。このことは、労働者と民主的小ブルジョジーの連合である社会民主主義に小ブルジョジーが多少引き寄せられつつあることを示すものだ。
 サッチャー、レーガンなどの新自由主義が、社会を荒廃させ、その反省から、イギリスではブレア労働党の第三の道が支持され、アメリカのクリントン政権でもそれに似た政策が取られ、それが「あたたかい保守主義」を看板にしたブッシュ共和党政権に継承された。ただ、ブッシュは、当選してしまうやそんな看板はたんに選挙用にすぎないことを、金持ち優遇税制の導入で示した。しかし、9・11ショック状態のアメリカ人を有事に強い指導力ある大統領のイメージをアフガニスタン・イラク侵略戦争で示すことで保ってきたブッシュ政権の高支持率もイラクの泥沼・内政の不人気によって、30%台にまで支持率を落としている。
 急進的構造改革路線は、イギリスでもアメリカでもフランスでもドイツでも、労働者階級の闘いを促進した。大ブルジョアジーのストレートなブルジョア独裁政治の下では、闘わなければ、生活が悪化し・零落するだけだからである。選挙結果は、日本でも似た状況が生まれていることを示している。

日本の大ブルジョアジー・金融貴族を代表する対米追従の小泉政権

 9月6日付『毎日新聞』によれば、堀江社長は、6日の東日本外国特派員協会の講演で、「憲法が『天皇は日本の象徴である』というところから始まるのには違和感がある。歴代の首相や内閣が(象徴天皇制を)何も変えようとしないのは多分、右翼の人たちが怖いから」などと指摘し、さらに、日本の国家体制を「大統領制にした方がいい。特にインターネットが普及して世の中の変化のスピードが速くなっている。リーダーが強力な権力を持っていないと対応していけない」と語ったという。
 国民投票によって選出される大統領は、国家元首として、対外的にも国家を代表し、「強力な権力」持ってリーダーシップを発揮できることは、フランスやアメリカを見れば明らかである。ホリエモンは、その方が、ブルジョア国家のリーダーにふさわしいと言うのである。ところが、天皇=元首というのがこの国の保守派や外務省などの国家官僚の認識である。彼らにとっては、大統領と天皇という国家元首が並び立つというような事態は望ましくないので、大統領制導入には反対か消極的なのである。憲法は国会を国家権力の最高機関としているので、衆議院議長=元首ということも言えるのだが。むろん、共和制と立憲君主制は、ブルジョア国家=ブルジョア独裁の変種にすぎない。
 小泉政権は、金融貴族の政治代表らしく、詐欺的に行動した。執行権の立法権への優位を直接の国民投票によって既成事実化したのである。この間、法律案は、官邸と官僚が作成して自民党に下ろされ、党の了承無しで、国会に出された。法案は、官邸によって決定されてきたのである。議会与党は、ただその法案を通すための首相・官邸の道具、頭数にすぎなくなった。形式は、立憲君主制であり、議会制民主主義であるが、実態は、首相=大統領制・共和制的になりつつあるのだ。
 共和制下でこそ、階級闘争が徹底的に闘われるとレーニンは言った。それは、「革命は、その直接的な、悲喜劇的な獲得物によって、その前進の道をきりひらいていったのではなく、逆に、結束した強力な反革命を生みだしたことによって、つまり、それとのたたかいをつうじてはじめて転覆の党が、ほんとうの革命党に成長することができるところの一つの敵をつくりだしたことによって、前進していった(『フランスにおける階級闘争』国民文庫31頁)ように、「選挙王政」(マルクス)=大統領制・共和制は、敵を結束させることで、革命党を成長させるからである。
 フランスで七月革命後の王政で支配したのは、金融貴族(銀行王、取引所王、鉄道王、炭坑、鉄鉱、森林所有者、彼らと結ぶ一部の地主)であった。「七月王政は、財政難のために、はじめから上層ブルジョアジーに依存していた。そして、上層ブルジョアジーに依存していることが、財政難の無際限の源泉となった。予算の均衡をはからないで、国家の行政を国民的生産の利益に従属させることはできない。ところが、国費を節減せずに、つまり、その一つ一つが現存制度のささえとなっている諸利益を損なわずに、また税のわりふりを改めずに、すなわち租税負担のおもな部分を上層ブルジョアジー自身の肩に転嫁しないで、どうしてこの均衡をはかることができるか?/議会を通じて支配し、立法していたブルジョアジーの分派にとっては、国家が負債に陥ることは、むしろ直接の利益になった。国庫の赤字、これこそまさに彼らの投機の本来の対象であって、彼らの致富の主源泉であった。毎年度末の新しい赤字、四年か五年たつごとに新しい借款、そうして新しい借款のたびごとに、人工的に破産のせとぎわにおかれた国家から、金融貴族が詐取する新しい機会があたえられた」(同上33〜4頁)。
 要するに、ブルジョア諸分派が競争しながら、同時に仲良く政治支配(ブルジョア独裁)を行えるのは、共和制しかなく、しかもブルジョア分派間の競争は、金融貴族の優位に行き着く。それによって社会には、腐敗、詐欺、汚職、生産によらず他人の富をごまかして金持ちになろうという病的欲望の肥大等々が蔓延する。金融貴族の代弁者小泉政権の下では、こうしたことが進む。それはすでにホリエモン現象に現れている。郵政民営化は金融貴族の要求である。今、郵政民営化をやったところで、独立会計で黒字だから、税金は節約できない。国の借金を減らすには、国家支出を減らし、国債を発行しないで、税金を高額所得者に重くかけることである。それが多数の人々のためになるブルジョア的な「改革」である。自民党の「改革」はそうではない。それに対して、革命的プロレタリアートは、その根本原因である生産関係の革命によって解決する。
 外資はすでに、財投機関債の買い手になっている。ヘッジファンドが行った投機と操作が、アジア通貨危機の引き金になったこと、イギリスでの外為投機によって国家破産の瀬戸際まで追いつめたこと、IMF管理以降、韓国の経済政策が、外資による強い圧力を加えられるようになったこと等々の教訓から、アセアン諸国がアメリカ抜きの「アジア共同体構想」を積極的に推進するようになり、韓国内の反米気運が強まったのである。ドル=ベッグ制という外為=ドル依存の危険性がアジア諸国に深く認識されたのである。日本の金融貴族は、アメリカ経済に依存しており、現在のアメリカ経済の好調に力を得ている。アメリカの財政赤字をファイナンスしているのは、海外からの旺盛な証券投資(財務省証券を含む)である。しかし、それは、イラク侵略戦争の泥沼化による財政支出増やハリケーン「カトリーナ」による被害対策としての大幅支出増によって、不安にさらされている。英米の金融資本は、小泉自民党が外資の自由のための「改革」を進めてくれるだろうと余計に期待しているだろう。

カトリーナ被害が暴露したアメリカの分裂、人種差別、貧困問題

 アメリカ南部を襲ったハリケーン「カトリーナ」による深刻な被害状況が明らかになり、それに対するブッシュ政権の初動対応の遅れに非難の声が起きた。ルイジアナ州ニューオリンズ市は、堤防の決壊によって全域が水没した。多数の死者が出ている上に、避難先での二次被害が発生するなど、被害が長期化することは確実である。逃げ遅れたのは、多くがアフリカ系の貧困者であり、人種差別が露わになった。アフリカ系アメリカ人の出世頭で、黒人コミュニティーから脱出し、WASP(白人プロテスタント)の価値観が染みこんだライス国務長官は、被害状況が深刻さを増している最中に、高級品の買い物を楽しんでいた。
 日本のマスメディアでも、大災害のたびに、モデルとして喧伝されてきた「連邦緊急事態庁」(FEMA)は、準備や調整に時間を取られ、初動対応が遅れた。州兵は、多くがイラクに派遣されていて、十分な数が早期に揃わず、しかも、指揮系統をめぐる連邦政府と州政府の間の調整に手間取る始末で、地元の強い要請にも素早く対応できなかった。そして、州兵の指揮権を巡る連邦政府と州政府の対立が続いている有り様だ。FEMAは先の組織再編で、テロ対策をメインにした国土安全保障省の一部局にされ、権限が縮小・制限された。それによって、対応が遅れたという指摘がある。おまけにFEMAのブラウン長官は、選挙の功績からブッシュによって指名された災害対策には素人であり、その対応のまずさを批判され、現場から引き上げさせられ更迭された。ブッシュが政府のポストをお手盛りで、「取り巻き」連中に与えたことが多くの人命を危険にさらしたのである。これがブッシュの「適材適所?」の人事の真実である。
 9月2日、連邦議会は、105億ドル(約1兆1千5百億円)の第一次補正予算、9月8日には、518億ドル(約5兆7千億円)の第2次補正予算案を可決した。計623億ドル(約6兆8千5百億円)に達するが、復興には2千億ドル(約22兆円)を要する(『東京新聞』)とも言われている。10日の「共同通信」は、「米議会予算局は9日、超大型ハリケーン「カトリーナ」被害の復興負担により、予算措置が済んだ分だけで「今後数年にわたり財政赤字が数百億ドル増加する」との見通しを示した」と伝えている。
 イラク戦費に加えて、膨大な財政負担が避けられないのである。財源をどこに求めるかが問題となる。米議会は、ハリケーン被害で、1%程度の成長率低下を予想しているが、そうなれば、税収増も頭打ちとなろう。さらに同日、「ハリケーン被害、保険金支払い最大600億ドルに」(『読売新聞』)と報道された。アメリカの保険会社がこの大量支払いによって、資金減少するのは確実である。多くの資金を獲得するために、日本市場からの資金調達にも、さらに積極的になろう。
 アメリカのCBSテレビの世論調査では、ブッシュ政権のこのハリケーン被害への対応を評価しない人が約6割に達している。ブッシュ政権が、金持ちや大企業の政権であるという性格を露わに示したことが、それ以外の多くのアメリカ人から反感を買っていることもあろう。分裂しているアメリカの姿が、ここにも現れている。
 ブッシュ政権の冷淡な対応に対して、反戦団体やNPOやSEIU(サービス労働者国際労組)などの労働組合などは、緊急のボランティアや募金活動を直ちに開始した。海外からは、アメリカによる経済封鎖を受けているキューバやキリスト教右派「クリスチャン・コーリション」の指導者ロバートソンから暗殺すべきだと言われたベネズエラのチャベス大統領からも、支援の申し出がなされた。ハリケーン被害への対応は、ブッシュ共和党政権が、貧困者や下層という多数に冷たいブルジョア独裁としての本性を明らかにしたのである。8月31日ロイターは、「米国勢調査局は30日、2004年の国内の貧困に関する年次報告を発表し、白人の貧困増加により4年連続で貧困率が上昇したことを明らかにした。報告によると、04年の米人口に占める貧困層の割合は12.7%で前年の21.5%から上昇。貧困層は前年から110万人増加して3700万人となった」と伝えている。

大ブルジョアジーの階級独裁をプロレタリア大衆と党の力で打ち倒せ

すでに日本では、1990年代後期から、ジニ係数の急伸に示されているように、貧富の格差が急拡大している。日本の子供の貧困率は14.3%(ユニセフ)になった(アメリカは21.9%)。2005年のOECDのレポートでは、2000年の日本の貧困率は15.3%で、高齢者と若年層で高く、加盟27カ国中5位で、90年代後半に1.6ポイント上昇した。ちなみに、OECD平均は10.4%。1位メキシコ20.3%、2位アメリカ17.1%、3位トルコ15.9%、4位アイルランド15.4%である(「OECD SOCIAL,EMPLOYMENT AND MIGRATION WORKING PAPERS No.22 」2005年3月10日)。小泉自民党の構造改革路線は、この「二極化」を拡大するのは確実である。
 自民党ホームページの、8月27日の山梨・静岡での小泉総理の街頭演説の「一部の特権階級の既得利益より、一億二千万の国民全体の利益を」と題する記事には、「1億2千万人の国民の利益をおろそかにして、一部の数十万人の役人の身分を守るため政界全体がふりまわされている現状を打破したいと、私はこの改革に挑戦している」とある。特定郵便局長と郵政労働者が特権階級に一括りにされているが、ここからは、郵政労働者がどのような特権を持っているのかがわからない。公務員はすべて特権階級に属しているという意味なら、特別公務員の国会議員、天皇、竹中郵政担当大臣、三代目の世襲議員小泉自身、自衛隊、等々は、特権階級に入ることになる。これは、小泉「改革」では、財政赤字が膨大に膨れあがっているのをなんとかするためには、誰が多く犠牲を払うかを決めなければならないので、犠牲の羊に特権階級というレッテルを貼ったものであり、旧国鉄分割民営化の際の、「ヤミカラキャンペーン」と同じやり方である。あるいは、それはネオコンと同じ神話主義的手法といってもいい。その効果は短期間しか続かない。
 国鉄「改革」そのものは失敗した。1980年代後期には、国鉄単体なら黒字化することが可能であった。無駄な投資を止め、高く売れる物を売り、歳出を節約すればよかったのである。それを民営化したので、旧国鉄の借金が増え続け、新たな国民負担が生じた。おまけに、JRの職場は、他の民間会社同様、上意下達の「リーダーシップ型」になって、労使間の風通しが悪くなり、さらに国鉄労働者とりわけ国労を中心に大量解雇し新規採用を抑制したために、技能の継続的伝承体制が弱体化した。それらを含めもろもろのことが重なって安全性が低下し、人々を危険にさらすことになっている。JR経営陣は、利益第一主義になり、営業サービスに力を注ぎ、安全サービスがおろそかになり、株主(外資を含む)ばかりを気にしている。経営陣の人事や経営計画・決算などを株主総会で承認してもらわねばならないからである。
 郵政民営化がすべての「改革」の行方を決めるなどというのは神話にすぎない。神話は信じるもので議論するものではない。だから、小泉は議論などしなかった。
 問題は、かかる神話に乗ってしまう人々の社会意識・フラストレーションの下には、「働けどはたらけどわが暮らし楽にならざりぢっと手を見る」(石川啄木)という閉塞状態からの解放を求める感情がある。賃上げ、所得増、減税、社会保障負担軽減、時短など生活向上への欲求、制度や社会変化の欲求、「革命」的意識がある。しかしこの選挙は、大ブルジョアジーの階級支配という事実をあからさまに人々の前に明らかにしたのであり、小泉自民党を支持した者の中からも犠牲の羊が選ばれることは確実で、多くがその期待は裏切られるだろう。
 しかし、アメリカのネオコンがでっち上げた「善悪神話」の賞味期限が数年で切れたことで明らかなように、神話の効果が持続できるのは短期間にすぎない。ネオコンの神話を信じたことで、アメリカ社会が支払った犠牲と代償は、多額のイラク戦費や1800人以上の戦死者など、大きい。小泉「改革」神話が社会に支払わせる代償は、「二極化」の拡大など大きいものになることは明らかだ。早いところ、神話を暴露し、信用を失わせなければならない。
 9・11事件後のアメリカで、ネオコンがでっち上げた神話にアメリカ人の多くが信じたが、その後、かかる神話に騙された事に気づくや、多くのアメリカ人は目覚めて、イラク戦争を間違いとする者が多数となり、ブッシュ政権の支持率も過去最低の38%に下落した。また、イラク戦争開戦前の2003年2月の国連安保理で、移動式化学兵器工場の証拠なるものなどを示してフセイン政権が大量破壊兵器を開発・保有していると大まじめで世界に訴えたパウエル元国務長官は、 9月8日のテレビ番組で、それは「(私の)汚点だ。私は米国を代表して証拠を提示した人間の一人だ。ひどいものだった」(9月9日付『毎日新聞』)と語った。同じように、ブッシュ共和党の物まねの小泉自民党の神話主義的手法の効果は長続きしない。
 定数480名の衆議院で3分の2以上の327議席を与党が占めたことで、大ブルジョアジーと金融貴族は、巨大な政治力を手中に入れた。今後、かれらの利害をはかる法律や制度が次々と作られるだろう。
 それに対して、革命的プロレタリアートは、債務に苦しむ小ブルジョジーをその重荷から救うために、金持ちに重い税金をかけて、財政を均衡させ、無駄な支出をなくし、国の借金を減らすなどの現体制の枠内で可能な大衆のための「改革」を支持する。同時に、その抜本的解決である現行の生産関係の廃止によって、現在の資本主義が生みだしている膨大な無駄を根本的になくすことを目指す。階級闘争は、社会の深層を動かして、巨大な反革命をグローバル化の小泉自民党として生みだしたことで、その対局のプロレタリアートの党の発展を促す条件を作りだした。中間派は、歴史のふるいにかけられた。「改革」か「守旧」かという偽の二項対立の奥に資本主義か共産主義かという真のそして運命的な二項対立が隠れていることを歴史的社会的諸事件が明らかにする。その一端は、この選挙では、社民党・日本共産党による「二極化」の広範な暴露によって浮き彫りにされ、広く人々の認識するところとなった。それで中間派が暴露された。
 階級階層格差社会は、アメリカはもちろん、IMF管理以降の韓国・中国・台湾・フィリピン・インドネシアなどアジア諸国を含めての世界の多くの社会に共通する。労働者階級大衆の国際共同行動の重要性が増している。グローバル化の進む中では、なおさらである。「二極化」の一極に巨大な米英資本などと国際的に連携するブルジョア独裁の大政党の誕生に対するもう一方の極であるプロレタリアートの国際主義的な党を発展させることが必要である。そうして、人々に潜在する革命への欲求に根本的に応えることである。




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