共産主義者同盟(火花)

2005年の経済情勢(2)

渋谷 一三
284号(2005年4月)所収


 この動機を「不純」なものと非難する雰囲気があるために、堀江社長自身は「業務提携」を口にしてはいる。何かを生産するのではなく大資本を操作することによって巨額の利益を得ることに対する反発は反資本主義の感情である。が、ほとんどの人はそうは自覚していない。資本主義の最高の発展段階としての利子生み資本(架空資本)の運動として、ヘッジファンドが象徴的に存在し始めて20年近くになる。堀江社長の手法は日本で始めて露骨に企業買収をしたというだけのことで、大蔵省OBが始めた村上ファンドも同様のことをしてきた。違いは、大蔵省OBという出自から、「村上ファンド」がニッポン放送株を17%しか持たないことに象徴される影の存在という存在様式を採ってきた点だけである。
 産業資本主義の段階は、何かしら新しいものを生み出すために巨額の資本が必要になり、その資本を提供した者が見返りとして利益を得る、というような外観を呈することが可能だった。だが、運動が発展して来ると、この外観はいわば仮の姿であって、利子生み資本は利益を得るために自己展開するというのがその本質であることがはっきりしてきた。だから、ここへの嫌悪意識は、反資本主義なのです。
 この騒動で欠落している視点は、2006年から金融自由化が本格化するという点です。
 金融を自由化すれば、堀江どころではない外資の日本企業漁りが始まる。企業の発展などは全く考えていない、利益のためだけの買収だったり企業つぶしだったりするのです。堀江さん自身がはっきり言うなら、彼の買収は来年から洪水のごとく起きる事態への対処を促す警鐘だと言うことすら出来る。外資に牛耳られる前に日本資本が買収して守ってあげる愛国的行動なのだと言うことすら出来るのです。
 コイズミが行ってきた「改革」の本質がもっとも顕著に現れたのが、今回のニッポン放送株取得「事件」なのです。しかも、それはただ序章にすぎない。郵政民営化が実現されてしまえば、日本のすべての都市銀行の預金残高の約3倍にもなる巨額の貯金が金融市場にさらされることとなる。郵便貯金会社株が外資・ヘッジファンドによって買い占められる事態は容易に予想できることです。
 ここにきて郵政民営化反対が急に勢いを増してきたのは、今回のライブドア騒動と決して無縁ではない。郵貯があるから無駄な「投資」や特殊法人が出来る。だから「蛇口」を塞げという論にはあらましの共通的合意が出来てきていた。財政投融資に巣くっていた橋本派の論理構造は破綻を宣告され、このことが参議院橋本派が青木をボスとして集団で小泉派に寝返った根拠でもあった。
 それがここへ来て急速に民営化反対が勢いを得たのは、先に述べたライブドアの買収劇が浮き出させた郵貯株式会社の外資による買収という恐怖に初めて気づいた間抜けた民営化賛成論者が、反対に回ったことによる。
 民族主義者風に言えば、堀江社長は日本を救ったということになる。
 外資による買収は、実際には米帝の金融の世界的支配を強化するだけであることから、決して日本の人民のためにはならないばかりか、世界の人民にとっても好ましくない事態です。そもそも郵政民営化をけしかけたのが米帝であり、それに狭い見地から乗ってしまった笑うべき下僕がコイズミ君で、うまく行きかけていたのに残念!というのが米帝の思うところでしょう。




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